仙骨とは?背骨と健康に与える驚くべき影響

目次

仙骨 (Sacrum)とは

概要

仙骨(せんこつ、英: Sacrum)は、脊柱の下部に位置し、骨盤の後部を形成する大きな三角形の骨です。仙骨は5つの仙椎(S1からS5)が癒合して1つの骨となったもので、上部は腰椎(L5)と、下部は尾骨(Coccyx)と接しています。仙骨は骨盤の構造と安定性に重要な役割を果たし、体重を下肢に伝えるサポートをします。

名称の由来と歴史

仙骨の名称には興味深い由来があります。ラテン語で「os sacrum」(神聖な骨)と呼ばれ、この呼び方には深い歴史的背景があります。

名称の由来に関する諸説

仙骨が「神聖な骨」と呼ばれる理由については、いくつかの説があります:

  • 仙骨が最大の椎骨であるため
  • 生殖器の位置する部位であるため、供犠として捧げられた
  • 古代、この骨が不壊であると信じられていた

歴史的・文化的背景

  • この名称は、古代ギリシア語の「ἱερόν ὀστέον」(神聖な骨)の翻訳であり、ギリシャの医師ガレノスの著作で確認されています。
  • 「神聖な骨」という呼び方は、英語(holy bone)、ドイツ語(heiliges Bein)、オランダ語(heiligbeen)など、他の言語にも見られます。
  • 古代エジプト、ギリシャ・ローマ時代、マヤ文明においても仙骨が神聖視されていたという記録があります。

日本語での表記

日本語では「仙骨」と表記されますが、これにも興味深い背景があります:

この表記は、ラテン語の「os sacrum」や英語の「sacred bone」の意味を反映しています。

かつては「薦骨」と書かれ、「神に薦(すす)める」という意味を持っていました。

「仙」の字は「仙人」「神仙」のように、不思議な力や神秘性を表します。

骨盤と股関節(前面)、腰椎、椎間板、寛骨、仙骨、腸骨、恥骨、坐骨
骨盤と股関節(前面)、腰椎、椎間板、寛骨、仙骨、腸骨、恥骨、坐骨

仙骨の構造

仙骨は5つの脊椎が癒合してできた三角形の骨です。

仙骨は、以下の主要な部分から構成されています:

  1. 基底部 (Base):
    • 仙骨の上端部分で、第五腰椎(L5)と連結します。仙椎の上面は、腰仙関節(Lumbosacral Joint)を形成します。
  2. 頂点 (Apex):
    • 仙骨の下端部分で、尾骨と連結します。
  3. 前面 (Pelvic Surface):
    • 凹面で、骨盤腔に向いています。前仙骨孔(Anterior Sacral Foramina)を持ち、仙骨内に走る神経が通過します。
  4. 後面 (Dorsal Surface):
    • 凸面で、背中側に向いています。後仙骨孔(Posterior Sacral Foramina)を持ち、神経の通り道を提供します。
  5. 側面 (Lateral Surface):
    • 仙腸関節(Sacroiliac Joint)を形成する部分で、腸骨(Ilium)と連結します。
  6. 仙骨管 (Sacral Canal):
    • 脊髄神経の通り道で、仙骨全体を縦に走ります。仙骨裂孔(Sacral Hiatus)を持ち、脊柱管の終端部です。

仙骨の機能

  1. 体重の伝達:
    • 仙骨は、上半身の体重を骨盤を介して下肢に伝達する役割を果たします。
  2. 骨盤の安定性:
    • 仙骨は骨盤の後部を形成し、骨盤全体の安定性を提供します。
  3. 神経の保護:
    • 仙骨は、仙骨管を通る脊髄神経の一部を保護します。
  4. 筋肉と靭帯の付着点:
    • 仙骨は多くの筋肉と靭帯の付着点となり、腰部と骨盤の動きを支えます。

仙骨と全身の健康との関連

1. 姿勢と筋肉機能

傍脊柱筋(背骨の周りの筋肉)の機能研究によると、仙骨と骨盤の正しい位置が姿勢の制御、腰部の安定性、全身のバランスに重要です。

2. 骨盤臓器の健康

仙骨は骨盤臓器の支持に重要な役割を果たしています。骨盤臓器脱の治療には、腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)が行われることがあり、これは排尿機能にも影響を与える可能性があります。

3. 神経系統との関連

仙骨の形成異常は神経系にも影響を及ぼす可能性があります。先天性脊椎疾患の中には、仙骨形成不全や脊髄係留症候群があり、これらは神経因性膀胱の原因となることがあります。

4. 皮膚の健康

仙骨部は褥瘡(床ずれ)が発生しやすい部位の一つです。長期臥床の患者さんでは特に注意が必要で、栄養状態や排便状況とも関連があります。

5. 全身の健康との関連

仙骨の健康は、姿勢を通じて呼吸や消化にも影響を与える可能性があります。また、仙骨周辺の痛みは運動不足を引き起こし、それが全身の健康に影響を及ぼすこともあります。

仙骨に付着する主な筋肉と靭帯

  1. 筋肉:
    • 梨状筋 (Piriformis Muscle):
      • 仙骨の前面に付着し、股関節の外旋を助けます。
    • 多裂筋 (Multifidus Muscle):
      • 仙骨の後面に付着し、脊柱の安定性を提供します。
    • 仙棘筋 (Sacrospinalis Muscle):
      • 脊柱全体に沿って走り、背筋群の一部として背中を伸展させます。
  2. 靭帯:
    • 仙腸靭帯 (Sacroiliac Ligaments):
      • 仙骨と腸骨を連結し、仙腸関節の安定性を提供します。
    • 仙棘靭帯 (Sacrotuberous Ligament):
      • 仙骨と坐骨結節(Ischial Tuberosity)を連結し、骨盤の安定性を助けます。
    • 仙尾靭帯 (Sacrococcygeal Ligament):
      • 仙骨と尾骨を連結し、尾椎の安定性を提供します。

神経系統との関係

仙骨には脊髄神経が通る穴(仙骨孔)があり、これらは:

  • 下肢の神経機能
  • 骨盤領域の神経機能

に重要な役割を果たしています。

自律神経系との関連

仙骨は自律神経系、特に副交感神経と密接な関係があります:

  • 副交感神経は仙骨の仙骨孔から出発
  • 仙骨(仙腸関節)の調整により、副交感神経の働きを改善
  • 交感神経とのバランスを整える可能性

脳脊髄液循環における役割

仙骨は脳脊髄液の循環においても重要な役割を担っています:

  • 脳脊髄液の循環は仙骨(仙髄)から始まる
  • 脊椎の中を通って頭蓋骨に至り、再び仙骨へ戻る
  • 仙骨がこの循環のポンプの役目を果たしているとされる

仙骨の関連疾患と怪我

  1. 仙腸関節障害 (Sacroiliac Joint Dysfunction):
    • 仙腸関節の異常により、腰痛や骨盤痛が発生します。過度の使用や外傷が原因です。
    • 治療には、理学療法、薬物療法、場合によっては注射が必要です。
  2. 仙骨骨折 (Sacral Fracture):
    • 外傷や骨粗鬆症により、仙骨が折れることがあります。
    • 症状には、激しい痛み、動きの制限が含まれます。
    • 治療には、安静、痛みの管理、場合によっては手術が必要です。
  3. 梨状筋症候群 (Piriformis Syndrome):
    • 梨状筋が坐骨神経を圧迫し、臀部や下肢に痛みやしびれを引き起こす状態です。
    • 治療には、ストレッチ、理学療法、場合によっては注射が必要です。

仙骨の健康維持

  1. 適切なエクササイズ:
    • 腰部と骨盤の筋肉を強化するエクササイズを行うことで、仙骨の安定性を維持します。
    • 特に、体幹トレーニングやストレッチが有効です。
  2. 正しい姿勢の維持:
    • 正しい姿勢を保つことで、仙骨や脊柱にかかる負担を軽減します。
  3. バランスの取れた栄養:
    • 骨の健康を維持するために、カルシウムやビタミンDを含むバランスの取れた食事を心がけましょう。

まとめ

仙骨は、骨盤の後部を形成し、体重の伝達、骨盤の安定性、神経の保護など、重要な役割を果たす骨です。仙骨の健康を維持するためには、適切なエクササイズ、正しい姿勢の維持、バランスの取れた栄養が重要です。仙骨を大切にし、日常生活やスポーツ活動においてその機能を最大限に活かすことが、全体的な健康と幸福感を高める鍵となります。また、仙骨は単なる骨格の一部ではなく、人体の様々な機能に関わる重要な構造であることがわかります。その特徴と機能を理解することは、人体の仕組みをより深く知る上で非常に有益です。さらに、仙骨の名称とその歴史的背景を知ることで、古代から現代に至るまでの医学や文化の発展についても興味深い洞察を得ることができます。

骨盤と股関節(前面)、腰椎、椎間板、寛骨、仙骨、腸骨、恥骨、坐骨

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この記事を書いた人

パーソナルトレーニング/治療院 連動性療法のバックエイジング。痛みのある部位だけではなく、痛みのある動きに影響を与えている関連している全身の関節の動きにも着目し、正しい筋の使い方に戻していきます。全身の連動性を高めるため、結果的に痛みを取り除くだけではなく、疲れにくく、怪我のしにくい体に若返らせることを目指しています。

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