小胸筋 (Pectoralis Minor)とは

目次

小胸筋 (Pectoralis Minor)

概要

小胸筋(しょうきょうきん、英: Pectoralis Minor)は、胸部の深層に位置する筋肉で、肩甲骨の動きや安定性に重要な役割を果たします。小胸筋は、第3から第5肋骨から起始し、肩甲骨の烏口突起に停止します。この筋肉は、肩甲骨を前方および下方に引き、呼吸補助筋としても機能します。

腹部、胸部、肩にある大きな筋肉 アウターマッスルとインナーマッスル
腹部、胸部、肩にある大きな筋肉 アウターマッスルとインナーマッスル

小胸筋の構造

小胸筋は、以下の部位から構成されています:

  1. 起始:
    • 第3から第5肋骨の前面(Anterior Surface of the 3rd to 5th Ribs)
  2. 停止:
    • 肩甲骨の烏口突起(Coracoid Process of the Scapula)

小胸筋の機能

  1. 肩甲骨の前方移動(Protraction of the Scapula):
    • 小胸筋は、肩甲骨を前方に引き、肩を前に出す動作を行います。
  2. 肩甲骨の下方回旋(Downward Rotation of the Scapula):
    • 小胸筋は、肩甲骨を下方に引き下げる動作を助けます。
  3. 呼吸補助(Accessory Muscle of Respiration):
    • 小胸筋は、固定された状態で肋骨を持ち上げ、呼吸を助ける補助筋として機能します。

小胸筋の役割と日常動作

  1. 押す動作:
    • 小胸筋は、押す動作や物を前方に押し出す動作において重要な役割を果たします。
  2. 腕を前方に引き寄せる動作:
    • 小胸筋は、腕を前方に引き寄せる動作をサポートします。
  3. 呼吸補助:
    • 激しい運動時や呼吸が深くなるときに、小胸筋は肋骨を持ち上げて呼吸を助けます。

小胸筋と大胸筋の関係

大胸筋 (Pectoralis Major) は、小胸筋のすぐ上に位置する大きな胸筋であり、上腕骨に付着します。この二つの筋肉は、肩甲骨や肩関節の動きにおいて協力的に働きます。

  • 大胸筋の構造
    • 起始:鎖骨の内側半分、胸骨、第1から第6肋骨の軟骨
    • 停止:上腕骨の大結節稜
  • 小胸筋と大胸筋の関係
    • 機能的関係:大胸筋は肩の屈曲、内転、内旋を行い、小胸筋は肩甲骨の前方移動と下方回旋を助けます。これにより、胸部全体の筋肉として腕の動きや肩甲骨の安定性に寄与します。
    • 解剖学的関係:大胸筋は小胸筋を覆うように位置しており、表層と深層の筋肉として協力して働きます。

姿勢との関連性

巻き肩 (Rounded Shoulders) は、肩が前方に丸まり、胸部が縮んだ状態を指します。これは小胸筋や大胸筋の緊張によって引き起こされることが多いです。

  • 巻き肩の原因
    • 小胸筋と大胸筋の緊張や短縮
    • 背中の筋肉(菱形筋や僧帽筋)の弱化
    • 長時間の座り仕事や不良姿勢
  • 姿勢への影響
    • 肩甲骨の前方傾斜:小胸筋の緊張により肩甲骨が前方に引かれ、巻き肩が助長されます。
    • 胸椎の過剰な後湾:巻き肩により胸椎が過剰に後湾し、姿勢が悪化します。
  • 改善方法
    • ストレッチ:小胸筋や大胸筋のストレッチを行い、筋肉の柔軟性を向上させます。
    • 強化トレーニング:背中の筋肉を強化し、肩甲骨の安定性を高めます。例えば、ローイングエクササイズや背筋運動が有効です。

小胸筋の強化方法

  1. プッシュアップ(Push-Ups):
    • 小胸筋を含む胸部の筋肉を強化するための基本的なエクササイズです。
  2. ダンベルフライ(Dumbbell Flyes):
    • ベンチに仰向けになり、ダンベルを使って腕を開閉する動作で小胸筋を鍛えます。
  3. ケーブルクロスオーバー(Cable Crossovers):
    • ケーブルマシンを使用して、腕を交差させる動作で小胸筋を強化します。
  4. プランク(Planks):
    • 体幹を安定させるエクササイズで、小胸筋を含む肩周りの筋肉も強化されます。

小胸筋のストレッチ

  1. ドアウェイストレッチ(Doorway Stretch):
    • ドアフレームに腕をかけ、体を前方に倒して小胸筋をストレッチします。
  2. 胸部ストレッチ(Chest Stretch):
    • 両手を背中の後ろで組み、胸を前方に突き出して小胸筋を伸ばします。
  3. ワールストレッチ(Wall Stretch):
    • 壁に片手をつけ、体を反対方向にひねって小胸筋をストレッチします。

小胸筋の関連疾患と怪我

  1. 小胸筋症候群(Pectoralis Minor Syndrome):
    • 小胸筋が過度に緊張または短縮すると、腕や肩、胸部に痛みやしびれを引き起こすことがあります。
  2. 筋肉の引きつり(筋痙攣):
    • 小胸筋が過度の使用や急激な動作により引きつることがあります。
  3. 筋肉の断裂(Muscle Tear):
    • 重い負荷や急激な動作により、小胸筋が断裂することがあります。断裂の程度により、手術が必要になる場合もあります。

小胸筋の健康維持

  1. 適切なウォームアップとクールダウン:
    • エクササイズ前後には、十分なウォームアップとクールダウンを行い、筋肉を準備し、リカバリーを促進します。
  2. 正しいフォームの使用:
    • エクササイズ時には、正しいフォームを保ち、筋肉や関節に過度の負担をかけないようにします。
  3. バランスの取れたトレーニング:
    • 小胸筋だけでなく、他の胸部や肩周りの筋肉もバランスよく鍛えることで、全体的な上半身の強化と安定性が向上します。
  4. 適切な栄養摂取:
    • 筋肉の成長と回復を促進するために、適切なタンパク質や栄養素を摂取します。

まとめ

小胸筋は、肩甲骨の動きや安定性に重要な役割を果たす筋肉です。日常生活やスポーツにおいて、押す動作、腕を前方に引き寄せる動作、呼吸補助などに関与します。小胸筋の健康を維持し、効果的に鍛えるためには、適切なエクササイズ、ストレッチ、栄養摂取が必要です。小胸筋を大切にし、全体的なフィットネスと健康を向上させるために、バランスの取れたトレーニングを行いましょう。

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この記事を書いた人

パーソナルトレーニング/治療院 連動性療法のバックエイジング。痛みのある部位だけではなく、痛みのある動きに影響を与えている関連している全身の関節の動きにも着目し、正しい筋の使い方に戻していきます。全身の連動性を高めるため、結果的に痛みを取り除くだけではなく、疲れにくく、怪我のしにくい体に若返らせることを目指しています。

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