肩甲挙筋(Levator Scapulae)とは

目次

肩甲挙筋(けんこうきょきん、英: Levator Scapulae)

概要

肩甲挙筋は、首の横側から肩甲骨(Scapula)の上角(Superior Angle)まで伸びる筋肉で、肩甲骨を持ち上げる動作に関与します。この筋肉は、首の運動や姿勢の維持にも重要な役割を果たします。

肩甲挙筋の解剖学的構造

肩甲挙筋は以下の構造を持ちます:

  1. 起始(Origin):
    • 第1から第4頸椎(C1-C4)の横突起(Transverse Processes)から起始します。
  2. 停止(Insertion):
    • 肩甲骨の内側縁(Medial Border)と上角(Superior Angle)に停止します。
  3. 神経支配(Innervation):
    • 頸神経叢(Cervical Plexus)および肩甲背神経(Dorsal Scapular Nerve)によって支配されます。
  4. 血液供給(Blood Supply):
    • 頸動脈(Cervical Artery)からの分枝である肩甲背動脈(Dorsal Scapular Artery)が血液を供給します。

肩甲挙筋の機能

肩甲挙筋は、以下の主要な機能を持ちます:

  1. 肩甲骨の挙上(Elevation):
    • 肩甲骨を持ち上げる動作を行います。
  2. 肩甲骨の内転(Adduction)および下方回旋(Downward Rotation):
    • 肩甲骨を脊柱に引き寄せ、下方に回旋させる動作に関与します。
  3. 頸部の側屈(Lateral Flexion)および回旋(Rotation):
    • 一側の肩甲挙筋が収縮すると、首を同側に側屈および回旋させます。

肩甲挙筋の役割と日常動作

肩甲挙筋は、以下のような日常動作において重要な役割を果たします:

  1. 肩をすくめる:
    • 肩を持ち上げる動作(例:驚いたときや寒いときに肩をすくめる)に関与します。
  2. 首の動き:
    • 首を側屈させる動作や回旋させる動作に関与します。
  3. 姿勢の維持:
    • 正しい姿勢を維持するために重要な筋肉です。

肩甲挙筋の強化方法

肩甲挙筋を強化するためのエクササイズには、以下のようなものがあります:

  1. シュラッグ(Shoulder Shrugs):
    • ダンベルやバーベルを持ち、肩を上げ下げするエクササイズです。
  2. バンデッドシュラッグ(Banded Shrugs):
    • 抵抗バンドを使用し、肩を持ち上げる動作を行います。
  3. フェイスプル(Face Pulls):
    • ケーブルマシンを使用し、顔の高さでロープを引くエクササイズです。

肩甲挙筋のストレッチ方法

肩甲挙筋をストレッチする方法には、以下のようなものがあります:

  1. 首の側屈ストレッチ(Neck Lateral Flexion Stretch):
    • 頭を一側に倒し、反対側の肩甲挙筋を伸ばします。反対の手で頭を軽く押さえると、さらに効果的です。
  2. 首の回旋ストレッチ(Neck Rotation Stretch):
    • 頭を一側に回旋させ、肩甲挙筋を伸ばします。
  3. 肩甲骨のストレッチ(Scapular Stretch):
    • 両手を前に伸ばし、肩甲骨を広げるようにストレッチします。

肩甲挙筋の関連疾患と怪我

肩甲挙筋には、以下のような疾患や怪我が関連することがあります:

  1. 筋緊張性頭痛(Tension Headaches):
    • 肩甲挙筋の過度な緊張が原因で、頭痛や首の痛みが生じることがあります。
  2. 筋筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome):
    • 肩甲挙筋にトリガーポイントが形成され、痛みや不快感が生じる状態です。
  3. 肩こり:
    • 長時間のデスクワークや不良姿勢により、肩甲挙筋が緊張し、肩こりが生じることがあります。

肩甲挙筋と肩こりの関連

肩甲挙筋は、肩こりの主な原因の一つとして知られています。肩甲挙筋の過度な緊張やストレスが、肩こりの症状を引き起こすことがあります。以下に、肩甲挙筋と肩こりの関連について詳しく説明します。

肩こりの原因

肩こりの原因として、以下のような要因が考えられます:

  1. 不良姿勢:
    • 長時間のデスクワークやスマートフォンの使用、不適切な姿勢での作業などにより、肩甲挙筋に過度な負担がかかることがあります。
  2. ストレス:
    • 精神的なストレスや緊張が肩甲挙筋の緊張を引き起こし、肩こりの原因となることがあります。
  3. 筋肉の過度な使用:
    • 重い物を持ち上げる作業や繰り返し同じ動作を行うことが、肩甲挙筋の疲労と緊張を招くことがあります。
  4. 運動不足:
    • 運動不足により、肩甲挙筋を含む肩周りの筋肉が弱くなり、筋肉の緊張と肩こりが生じることがあります。

肩甲挙筋の緊張と肩こり

肩甲挙筋の緊張が肩こりの原因となるメカニズムは以下の通りです:

  1. 筋肉の収縮と血流の低下:
    • 肩甲挙筋が長時間にわたり緊張し続けると、筋肉が収縮して血流が低下します。これにより、筋肉に十分な酸素と栄養が供給されず、疲労物質が蓄積し、痛みや不快感が生じます。
  2. トリガーポイントの形成:
    • 肩甲挙筋にトリガーポイント(痛みを引き起こす硬結部分)が形成されると、その周囲に痛みが広がり、肩こりが悪化します。
  3. 姿勢の悪化:
    • 肩甲挙筋の緊張により、姿勢が悪化し、他の筋肉にも過度な負担がかかることで、肩こりの症状が増強されます。

肩甲挙筋の健康維持

肩甲挙筋の健康を維持するためには、以下の点に注意することが重要です:

  1. 適切なエクササイズ:
    • 肩甲挙筋を強化し、柔軟性を維持するエクササイズを定期的に行います。
  2. 正しい姿勢の維持:
    • 長時間のデスクワークや立ち仕事では、正しい姿勢を維持し、肩甲挙筋への過度な負担を避けます。
  3. 定期的なストレッチ:
    • 肩甲挙筋をリラックスさせ、緊張を解消するために、定期的にストレッチを行います。

まとめ

肩甲挙筋は、肩甲骨を持ち上げる動作や首の動き、姿勢の維持に重要な役割を果たす筋肉です。適切なエクササイズやストレッチ、姿勢の管理を通じて肩甲挙筋の健康を維持することが、日常生活やスポーツ活動において重要です。肩甲挙筋を大切にし、全体的な身体機能と健康を向上させるために、日常的なケアを心がけましょう。

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この記事を書いた人

パーソナルトレーニング/治療院 連動性療法のバックエイジング。痛みのある部位だけではなく、痛みのある動きに影響を与えている関連している全身の関節の動きにも着目し、正しい筋の使い方に戻していきます。全身の連動性を高めるため、結果的に痛みを取り除くだけではなく、疲れにくく、怪我のしにくい体に若返らせることを目指しています。

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